三井住友海上文化財団は、昭和63(1988)年に、大正海上火災保険株式会社(現三井住友海上火災保険株式会社)の創立70周年を記念しメセナ活動を担う団体として、「音楽・郷土芸能の分野において、文化及び芸術活動に関する事業を行い、文化及び芸術の振興並びに国際交流の促進に寄与すること」を事業目的として掲げ、設立されました。
今年度令和5(2023)年は財団設立35周年を迎える年となり、ここにあらためて設立当初より、数多くの方々にご指導いただきましたこと、また絶大なるご支援いただきましたことに、心より厚く御礼申し上げます。
今年度の3つの主要事業におきましては、1つめの「地域住民のためのコンサート」(「三井住友海上文化財団 ときめくひととき」公演)が、11月に累計開催コンサート数が1,000回を超えることとなり、全国各地域にお住まいの30万人を超える方々に、日本で指折りの演奏家による質の高い生のクラシック音楽を提供し続けております。
2つめの「文化の国際交流活動に対する助成」では、延べ492団体に総額3億730万円の助成金を贈呈し、アマチュア団体が取り組む国際交流活動を支援しております。
3つめの、「全国高等学校総合文化祭優秀校東京公演」への助成は、34回目を迎える歴史と伝統のある高校生の文化活動へ支援を継続しております。
当財団の歴史を振り返ってみますと、これから「平成」が幕を開けようという時に設立されました。我が国の経済が隆盛を極めていた頃で、企業に求められることは単にモノやサービスを提供するだけではないとの認識に立脚し、良き企業市民として地域社会の皆さまと共に文化を考え、創造し、支援・育成する事業を開始しました。当財団の一つひとつの活動は大変地味なものではあるものの、実施する度に事業の方向性は誤りではないとの手応えを感じることができ、長い経済的な停滞などもあったこの時代において些かも活動を狭めることなく、35周年を迎える今年度まで取り組んで参りました。
コロナ禍が落ち着いてきた頃に、「地域住民のためのコンサート」開催地にお伺いした際、地元の小学校からこんなリクエストをいただきました。「コロナ禍の最中に入学した1年生から3年生が入学以来校歌を声に出して歌えていないのです。是非演奏家の方に校歌を演奏していただき初めて声を出して歌わせることは出来ないでしょうか。」と。
演奏家の方々に快諾いただき小学校体育館で校歌を演奏すると、生徒達の待ちわびていたかのような澄んだ声が体育館に響き渡り、生徒、先生が涙しながら歌う瞬間に立ち会えたことは感銘を受けると共に、世の中が直面した厳しい環境へ当財団として貢献できたという今後大切にしていくべき財産となりました。
これからも芸術文化活動を通じて皆さまに精神的な豊かさと潤いのある生活を提供し、全国各地域に貢献し続けることが当財団の使命である、との信念に基づき、研鑽を怠らず充実した事業を展開して参りたいと考えております。
今後とも皆さまの一層のご理解とご支援をお願い申し上げます。

理事長